MTBのホイール径が26インチから29インチへと、主流がどんどん移り変わっています。
29インチ、タイヤの大径化がもたらすメリットは数多くあります。
しかし、デメリットも併せもつ、という理解をしているかと思います。
TKインプレッション
こちらに詳しく書いてありますが、このデメリットを打ち消せれば、残るのはメリットだけです。
それを達成しているのがこの、 S-Works Stumpjumper Carbon 29 XTR なのです。
このSワークスと同じ系譜であります、スタンプジャンパーHT29エキスパートを
1年間様々なレース、イベント、トレイルなどで乗り込みましたが、
同じ様な特性を示していて、エキスパートモデルはとても良い完成度です。
しかし、Sワークスはコストを度外視して、究極を目指しているので、
やはり性能に明確な差があります。
それは圧倒的な”軽さ”です。
©Yasuhiro Nakajima
2012 XTERRAジャパンチャンピオンシップにて、実戦で使用したインプレです。
”軽さ”といっても、様々な軽さがあります。
持って軽いという、バイク重量、
走って軽いという、加速の軽さ、
ハンドリングの軽さ、軽快なコントロール性、
これらがレースバイクに求められる”軽さ”になります。
重量は言わずもがな、持てば誰でもわかるほどの絶対的に軽いです。
29インチ=車輪が大きい=重い、という図式が成り立ちますが、
このSワークスはホイール周りが圧倒的に軽いのです。
カーボンリムを使った、ROVAL CONTROL SL 29、これが強烈な性能を発揮しています!
数多くの29ホイールをテストライドする機会に恵まれていますが、
この軽さを凌ぐモデルは存在しませんでした。
ホイールに合わせるタイヤも重量で、ファストトラックというノブを配しながらも
重さを抑えているタイヤ、この組み合わせがまるでロードバイクのような軽さを
もたらしてくれます。
もちろんフレーム、ブレインフェイドを装備したフロントフォーク、それに合わせるコンポも
軽量なアッセンブルになっています。
その結果、XTERRAで多くある押しや担ぎも、ひょいひょいと容易に行え、
写真のように、肩を出したレースウエアでも、サドルを肩に引っ掛けても、
軽いから痛くもないのです。
トランジッションは当然楽です。
©Yasuhiro Nakajima
バイクを押してから飛び乗り、バイク上でシューズをしっかりと合わせてから加速をしていく、
この状況でも、29インチならばホイール自体が高い直進安定を持っていますから、
ふらつくことなく安心してまっすぐ走れます。
そしてそこからの加速は軽く、速いです!
ホイール&タイヤの軽さがものすごく活きてくる瞬間です。
ホイールとタイヤの軽さもさることながら、合わせて強さ、剛性も大事な要素です。
加速ではペダリングで瞬間的に大きな力がかかりますので、ホイールはもとより
フレームも剛性が問われます。
ダウンチューブ、BBと共に、シートステーがしっかりとたわまないことが大事です。
29インチでは、ホイールが大きい分、シートステーが長くなりがちです。
ここが長いとたわみやすく、加速性が落ちてしまいます。
そのためチェーンステーは極めて短く、そして強く作られているのです。
それを含めてスタンプジャンパーは、フレームのディメンションが高い完成度で、
26インチと同じ走りが得られます。
加速が軽く行えたら、素早く巡航速度に乗って行けますので、そうなったら29インチの
メリットがとてつもなく活きてくるのです。
©Yasuhiro Nakajima
転倒の時のダメージが大きくなるので、基本的にはグローブをするのですが、
余りにもこのSワークスが安定した走りであり、ハンドリングが軽く、
意のままに軽快にコントロール出来たために転倒はしないだろうと、
グローブをしなかったのです。
29インチだと、ホイールがまっすぐ進もうとしますので、コーナリングや左右への切り返しなど、
バイクコントロールが鈍くなります。
また、ホイールベースの長いバイクだとそのデメリットが増大しがちです。
このコントロール性も、ホイールの軽さと強さ、そして、29ならではの地面い吸い付くような
タイヤのグリップ、そしてそれを増大させるブレインフェイド搭載のサスペンションのおかげで
タイトなシングルトラックが、メインのコースでもクイクイ曲がり、しかも切れ込み過ぎることもなく、
狙ったラインをスパスパと通過させられました。
ハンドリングで大事なのは、加速性でもそうですが、フレームの強さです。
フロント周りの荷重をしっかりと受け応えるヘッドとダウンチューブが求められます。
ターマックのようなつくりをしていますが、まさしく走りもオフロードのターマックのような印象で、
高いスピードに瞬時に乗って、それをスキルに応じて瞬時にコントロールすることが出来ました。
29を扱いやすく乗りこなせる、これはSPECIALIZEDの29ラインナップ全てに共通しますが、
速く走らせられれば走らせられるほど、バイクのコントロールが上手ければ上手いほど、
その性能を発揮させ、メリットが引き出されて速くゴールできるのが、Sワークスなのです。
©Yasuhiro Nakajima
軽さと強さを併せ持っても、路面の振動をいなして、身体へのストレスを増やさないというのは
ライダーのパフォーマンスを最大化するSPECIALIZEDの大事なポイントですので、
Sワークスでも高いレベルでバランスさせています。
今年はIRONMANチャレンジに比重をとっていてMTBはあまり乗れていないので、
バイクパートでタイムを大幅に短縮できたのは、このSワークスの性能が大きくものを
言ったのかなと正直思います。
MTBにあまり乗れていないうえに、タイトなでテクニカルなコースに臨む上で、
普段常用しているLサイズからMサイズにサイズダウンして乗ったことも、効果的でした。
29インチの性能を享受するには、徹底的にコンパクト、素早さ、重さ、にこだわるべきだと
改めて確認しました。
改めて確認しました。
個人的なアドバイスとしては、29でレースやトレイルのためにコントロール性を
優先させるならば、乗れる小さいサイズを選ぶこと。
ツーリングやファンライドで安定感を求めるならば大きめもありかな、ということ。
是非参考にしてみてください。