2012年1月21日土曜日

S-Works SHIV 2012


普段はこのようにトランジッションPRO2011でDHポジションライドをしている自分の視点による、
S-Works SHIV 2012の試乗インプレです(ちなみに僅かですがShiv2010も乗った経験もあります)。


そのポジションは柔軟性がある自分の場合、このように割と低い感じです。


Shivでは、それよりもやや前傾角の浅いポジションでのライドとなっています。


とはいえ、その性能は十分に感じることが出来ました。

まずは漕ぎ出して衝撃的なまでに走りが軽い、そしてスムーズです。最初の一踏みから回転を上げていくと、巡航速度へ滑らかにするするとスピードがのっていきます。

剛性が高い事は十分に感じ取れますが、それは決して足に力を跳ね返すような嫌な感じではなく、正確なペダリングを刻む為の微小なブレやタイムラグを排した、混じりっ気のないクリアなペダリングフィールで非常に気持ち良く感じます。


フレームがたわむ方向にわざとラフにペダリングしてもしっかりと受け止めてくれますし、綺麗なペダリングストロークで大きな力を掛けた時には、全て推進力になっていると感じられるようです。巡航速度をキープするのも非常に楽に感じます、上死点~3時までのパワーが立ちあがる瞬間のレスポンスの良さが速度、ギア比を軽い負荷に感じさせてくれます。

ヘッド、ダウンチューブ、BB周、チェーンステーと続くパワー伝達部の剛性が、ターマックなどからのフィードバックが活かされた高いものなのでしょう。


乗り心地、路面からの衝撃は見た目がガッチリとしたシートステーやフロントフォークとは相反して、すこぶる快適なものです。ザラッとした振動の感触、ゴツゴツ、カンカンとしたダイレクトな衝撃が想像以上に少なく、TTShivとは明らかにカーボンの積層などを最適化して、トライアスロンのランに疲労を残さないように配慮したものになっているようです。


安定性もよくロードバイクから乗り替えても、ポジションにも寄りますが、違和感なくコントロールできると思います。バイクのディメンション、バランスがDHポジションで乗るトライアスロンに最適化されていることが伺えます。

低いDHポジションの前荷重、そしてバーパッドでのコントロール、ですからふらつきやすく、ふらついてしまっては、安心して高いケイデンスを保ち、大きなペダリングパワーを発揮することも出来ません。またふらつくというkとは緊張感を強いるということで、上半身の力みを生み出して、ランンへの負担にも繋がってしまいます。

空気抵抗低減と合わせて、安定性というのはとても大事な要素なのです。ジオメトリー表を見ると、ホイールベースがいわゆるUCI規定のTTバイクより長めに設定してあり、長時間の安定性を優先させていることが、数値的にも確認できます。

当日は横風も強かったのですが、思ったよりも振られることがなくて安心でした。横風の影響は車輪や、体の姿勢による要因が大きいものですが、とくに前輪の振られる=怖いという心理的な不安にはフォークの影響もあります。後輪よりも、荷重の少ない前輪は振られやすいとも言えますから、この安心感は心強いです。


安心感にはこのヘッド周りの剛性も貢献していると思います。上半身を預けて乗るDHポジションでは、その重さがバーパッドからベースバー、そしてヘッド周りへと掛かってきます。そのためここがガシッとしていないと、僅かな細かなたわみやヨレを感じて不安感に繋がります。

これらフレームの数値、剛性に関わることはしっかりとした自分に合ったサイズのバイクに乗ってこそ活かされます。日本人的にはXSからあるラインナップが嬉しいところ、小柄なアスリートも十分に恩恵をうけることが出来ます。



特徴的なフレーム内臓ハイドレーションシステムは今回は試乗だったので、使っていませんが、ボトルに伸ばしてとることに比べれば、簡単便利なのは明らかです。手を伸ばしてふらついたり、姿勢を変えてエアロ効果が減ってしまったり、と考えてしまうと、補水が面倒くさくなって、後々ランで脱水症状に陥ってしまったりします。また水を飲むのも面倒くさいと、補給食をとることも億劫になりがちです。積極的な水分とエネルギー補給のためにも、この補給システムはトライアスロンのトータルパフォーマンスアップを考えたときに、とても有効でしょう。


そして、トライアスロンバイクとしてはある意味最優先したいのは、自分のフォーム、ペース、距離にあった適切なポジションが構築できるということです!

身体の局所の疲労、痛みはバイクの各パーツが求められる場所にセットされていないことから起こりますので、まして制限されやすいDHポジションでは、負担が大きくなってしまいます。


このShivにアッセンブルされたエアロバーセットはとても大きな調整幅を、的確に細かく求めるままにセッティングできます。


ベースハンドルの位置を前後に、エクステンションバーの前後左右位置、バーパッドの前後左右、そして角度、と思いのままです。エクステンションバー&パッドの高さはブロックを増減して調整しますが、その範囲がとても広いです。


ステムの高さもブロック積み替えで変えられます、上記と合わせると高さ方向は10cm以上の調整幅を持っています。また、ステムに沿う形でエアロパーツも用意されていますので、エアロ効果も犠牲にしません。これらの調整幅により、身体の柔軟性に無理なく、ペダリングに影響のでない、前傾角度でDHポジションをセッティングできます。


サドルポジションも、シートポストを前後に入れ替えることで、サドルの前後位置を大幅な前乗からロードバイクポジションまで設定できます。ポストは高さの調整も簡単なオーソドックスなスタイルです。ポジションの出しやすさに徹底的にこだわった結果です。

サドルは前傾姿勢で骨盤の安定が高いローミンEVO、パッドが柔らかいサドルではありませんがその形状からセッティングが決まると圧迫がすくなく、長時間を一定の位置に保って乗っても快適なサドルです。


前後ブレーキ周りは専用品ながらも、セッティング、メンテナンスガスがしやすい造りになっています。ハンドル&ヘッド周りも同様に、ボルトにアクセスしやすいすく出来ています。これは遠征のパッキング、再アッセンブル、そして調整が必須となるトライアスロンのために簡単にいじれることが重要であることからの、配慮だと思われます。

いくらエアロを追求して、内装や特別なブレーキを使ったとしても、プロにメカニックが帯同しない遠征先で、組み立てられなかったり、整備不良となってしまっては、どんな高価な機材も錆び付いた名刀に落ちぶれてしまいます。



まとめますと、バイク性能は、アイアンマンチャンピオンのバイクラップ記録が示す通り、世界最高です。高い剛性を感じますが、それは硬さではなく、走りの軽さとして、反応の速さとして、生きています。路面の衝撃も十分にいなしてくれているのがスゴイところ。

また、バイクの操作性、安定性もどちらも極めて高くロードバイクのような走りやすさといったら言い過ぎかもしれませんが、とにかく気持良く走らせることが出来ます。

誰にでも、見合ったポジションにセッティングできるのでパフォーマンスを存分に発揮できる、安心して乗りこなせる超高性能トライアスロンバイクだと言えます。